八幡平市で経産牛115頭、育成牛80頭を飼養する貴良さん。約20年前の就農時は乳量にこだわることで牛への負担もあり苦労したが、岩手県乳質改善大賞のことを知り、乳質を意識した飼養管理に切り替え経営も改善。令和7年度まで10年連続で12回目を受賞。牛舎を増築し規模拡大するも効率化も追及し、妻の麻奈美さんと2人のパート、子ども達の家族経営で作業をこなす。令和7年度全国優良畜産経営管理技術発表会では、牛にも人にも無理のない酪農経営を信条に歩んできた成果が高く評価され、最優秀賞(農林水産大臣賞)を受賞した。
高校卒業後、地元JAで畜産の指導や酪農ヘルパーとして勤務した貴良さん。酪農の可能性を追究したいという気持ちで10年勤めた後に就農。当時は乳量を意識した管理で牛への負担も大きかった。乳房炎など病気や牛が弱ったことで乳量も減り順調なスタートではなかった。そんな時、乳質改善大賞の存在を知った。「地元で大賞を取った人がいたのもきっかけで意識するようになった」と話す。

それからは、牛床の管理や搾乳衛生、乳房炎対策、良質な餌の確保などに取り組んだ。餌となる牧草は適期の刈り取りと、しっかり乾燥させて収穫することを意識した。そして2年目に初の乳質改善大賞を受賞した。「最初は大変だったが一回取ればやるべき事も見え作業も習慣化された」と話す。そして牛への負担も減り健康であることで獣医を呼ぶ頻度や牛の更新率も減り経営面のメリットも見えてきた。

また、増頭に合わせて草地の確保や定期的な草地更新で良質な牧草も確保してきた。一方、牛舎は作業効率も考慮し、低投資で直線的に増築し100頭牛舎まで拡大したが、自動給餌機などへの投資はしていない。「対頭式の牛舎は中央通路が広くエサを与えながら牛の様子も見られるメリットもある」と話す。そして、令和4年には八幡平市繁殖育成センターの完成を機に育成牛をすべて預託し、空いた牛舎で乾乳牛を管理した。育成牛の預託は大幅な省力化につながり、飼養管理と粗飼料生産に集中できることで良質な生乳の生産につなげている。
「作業は必ず複数の人でやる」と話す貴良さん。一人での作業をさける理由について「万が一事故を起こしたとしても、すぐに見つければ助かる可能性は高い」と話す。また、作業は特別なことはやらず統一することで誰かがいなくても安定した作業ができ、子ども達との時間や趣味の時間も取れるようにしている。

そして、朝と夕方の牛舎作業は、家族で一緒に食事ができるような時間にしている。子どもたちは学校から帰ってくると牛舎に足を運びその日あったことを話す。そして、一緒に夕食を食べるという環境を作ってきた。「牛舎は子どもたちとのコミュニケーションの場ですね」と笑顔を見せる。

子どもたちは牛舎を遊び場として育ち、長男の遥翔さんは就農に向けて帯広畜産大学へ進学。長女の梨愛さんは第16回全日本ホルスタイン共進会で高校3年生のリードマンコンテストで「セカンドベストリードマン」を受賞した。牛にも人にも無理のない酪農経営により酪農の魅力が子どもたちに受け継がれてきた。そして、「信頼できる家族でまわせる今がベスト」と話す貴良さん。乳質改善大賞に育てられてきた藤田牧場は、八幡平市最大規模の家族経営へと成長し、子どもたちがその先の未来を描こうとしている。
育成牛約80頭を預託することで、飼養管理や粗飼料生産に集中することで生産性が向上。旧育成牛舎で乾乳牛を管理することによる搾乳牛の増頭と余剰となった初妊牛や自給粗飼料の販売によって預託料を賄えています。また、乳質改善大賞の取り組みを進める中で、多くの方が視察に訪れ交流の和も広がり、学びにもつながっています。

冬は子どものスキーの送り迎えや大会の応援などで忙しくしています。
※広報誌「夢郷」 2026年3月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。