二戸市でリンゴ3ha、キュウリ35a、水稲75aを作付けする巧さん。両親と妻とで経営し、パートやシルバー人材センターを活用した雇用をしながら作業をこなしている。作業の効率化を図るために作業のマニュアル化も進めている。また、よりいいものを作りたいという飽くなき探求心が巧さんの原動力となっている。
リンゴとキュウリと米を生産する農家で育った巧さん。子どもの頃はリンゴ畑が遊び場だった。「よくリンゴの木に登って遊んでいた」と話す。長男ということもあり、将来は農業を継ぐという意識をもっていた。小学生になると遊び場だった畑で両親の農作業を手伝うようになっていた。高校卒業後は、岩手県立農業大学校に進み、果樹について学んだ。しかし、卒業後の進路のことで「最初は、外で働いたほうがいい」と言われていた巧さん。地元の企業に就職し、休日に家の農作業を手伝うという選択をした。「いずれ継ぐのであれば、農作業のノウハウや技術を学んでおく必要があると感じていた」と当時を話す。休日に両親を手伝いながら経験を重ね、技術を身に付けていった。27歳の時に実家での就農という形はとったが、冬場は出稼ぎをする生活だった。

その後、30歳の時に青年就農給付金の関係でキュウリ10aを自分で経営するようになった。「この時、初めて農業をやっているという実感が湧いた」と話す。農業への意識も高まる巧さんは長年実家の農業を手伝ってきたことで、両親の農業の基本となる「おいしいものを作りたい」という気持ちも身に付いていた。

「いいキュウリを食べてもらうには鮮度が大事」と話す巧さん。早い時間で収穫を終わらせ、エアコンの効いた作業場で調整作業をしている。収穫したキュウリを積んだ軽トラックをそのまま作業場に入れるため低い温度帯での作業により鮮度が維持され、キュウリに触る回数も減らしている。また、管理作業は、最適なタイミングでの作業を意識している。「1日の作業が変わることでキュウリの生育も変わる」と話す。農薬散布も天候や状況により変えるなど「いいものを作りたい」という気持ちで農業と向き合う親の姿を見て来たからこそ、身に付いた感覚だ。 リンゴ栽培も、若い樹から収穫できるように毎年改植し、重なる枝をなくするような剪定をしている。また、主力品種の「ふじ」も4系統から優良系統への改植も進めている。

令和3年には経営を受け継ぎ、今年で就農から17年になるが「失敗は常にあるが、失敗したままにしない」と語る。今年、失敗したことと、そのために来年は何をやるかを手帳に書き留めている。常に改善する意識を持つことで大きな失敗もなくなっている。その経験を積み重ねてきたことで作業の適期を見定められ、必要な時にしっかり手をかけることが品質の良いリンゴやキュウリの生産につながっている。
今後について「スマート農業も視野に入れ労働力を抑えた経営を考えている」と話す。令和7年にはロボット草刈り機を導入し、リンゴ園地の草刈り作業の自動化に取り組んだ。また、キュウリやリンゴは重量があるため、フォークリフトをより活用できる作業場作りも計画している。

子どもの頃から親の背中を見て育ってきた巧さん。いいものを作るという農業の基本を受け継ぎつつ、より効率的な経営の実践に向け飽くなき挑戦はこれからも続いていく。
パートなど雇用をするなかで、作業のバラつきをなくすためのマニュアル化を進めています。作業マニュアルは定着してきたので、今後は人が変わっても同じ作業ができるようにマニュアルの言語化を進めていきます。
仕事が落ち着く冬場は、子どもたちをスキーやスケートに連れていきたいですね。
※広報誌「夢郷」 2025年12月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。