久慈市で主食用米10 ha、籾米サイレージ38 ha、ハウス5棟でミニトマトを作付けする農事組合法人宇部川ファーム(代表理事:鹿糠沢津嘉さん)は設立から11年目を迎えている。地元の豚ぷんペレットの活用や、山形村短角牛のエサとなる籾米サイレージの製造など、限られた圃場や施設、地域資源を最大限に活用している。稲作を中心とする経営の中で、地域資源を有効活用した経営を進めている。
平成26年12月に設立し、平成27年から実際の作業が始まった。当初は主食用米、飼料用米、WCS(ホールクロップサイレージ)の組み合せを予定していたが、WCSの収穫機への設備投資も大きく、籾米サイレージへと切り替えた。飼料用米と比べても、乾燥や籾摺りの行程が省けるため、作業効率にもつながっている。籾米サイレージは、刈り取った生籾を粉砕機に入れてすりつぶした後、乳酸菌を添加してパックし、2カ月発酵させて出来上がる。久慈市で生産される山形村短角牛は、国産のエサにこだわり生産されているため、試験を重ね、現在は全量をいわてくじ短角牛肥育部会に供給している。5年目には、主食用米と籾米サイレージの現在と同じ2本柱の生産となった。

また、野田村で養豚業を営む㈱のだファームの豚ぷんを使った豚ぷんペレットを活用したコスト低減に向けた栽培実証に令和4年から取り組み導入に漕ぎつけ、コスト削減にもつながっている。地域にある資源を有効に循環させる上でも、宇部川ファームの存在意義も高くなっている。
一方で、長期雇用に繋げるために水稲の育苗ハウスで夏場の収入源としてホウレンソウを作付けしていたが、プール育苗のための均平する作業の労力がかかるという課題があった。鹿糠沢さんは「県内での導入は後発であったが、作業効率のため全農式トロ箱養液栽培システム「うぃずOne」を導入した」と話す。平成30年に1棟に導入しミニトマトを作付けした。令和4年には5棟まで増やし、令和5年には全農オリジナル品種のミニトマト「アンジェレ」に品種を切り替えた。アンジェレは、へたなしのバラ出荷で収穫調整作業の効率化にもつながっている。また、事前に価格が決まるため計画を立てやすいメリットもある。

主食用米は10 haに作付けしているが、令和5年から岩手県オリジナル水稲品種「白銀のひかり」の試験栽培を始めた。久慈地域白銀のひかり栽培研究会の副会長として20aに作付けし、一般栽培が始まった今年は全量「白銀のひかり」に切り替えた。実際に栽培して「倒伏しづらく、収量も見込めそうだ」と手応えを感じている。「白銀のひかり」は、良食味の「銀河のしずく」を母に持ち、粒が白くて大きく食味が優れ、倒伏や多収も期待でき、地域でも期待が高まっている。

将来に向けては「継続できる経営を」と話す鹿糠沢さん。現在は、刈り取った後の稲わらを使った稲わらサイレージに挑戦している。当初は稲わらロールを考えていたが、乾燥が必要で天候に左右されるため、刈り取りと同時にできるサイレージの試験を進めている。また、ミニトマトは霜が降りる11月頃で収穫が終わるため、冬場にできる品目も模索している。
水稲を中心とした経営を進める中で畜産業との関わりも深まり、地域資源の有効活用につながっている。一方、経営を継続させていくための挑戦は今後も続いていく。

事業の継続を進めるなかで、籾米サイレージの生産やトロ箱養液栽培システム「うぃずOne」を使った園芸品目の導入、豚ぷんペレットを活用したコスト低減、湛水直播栽培など、様々な取り組みを実践してきています。
晩酌を楽しみに、日々農作業に励んでいます。焼酎が1番好きですね。
※広報誌「夢郷」 2025年11月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。