農のかたち〜私流〜

信頼関係と 生産する責任

岩手町で、レタス3.9 ha、キャベツ50a、白菜1ha、スイートコーン20aを作付けする武志さん。安全・安心なレタスを消費者に届けるため、令和6年にレタスで第3者認証のグローバルGAPの団体認証を取得する。今朝採りレタスという特別な販売をしてくれる出荷先からの期待に応えることで産地としての責任を果たし、消費者のことを考え生産に汗を流している。

逃げの気持ちから

今年で就農から18年目になる武志さん。農家の長男だったが、元々は農業から逃げの気持ちを持っていた。「子どもの頃は、親の大変な姿をみていたので農業はやりたくないという気持ちを持っていた」と当時を話す。反面、いつかはやらなければならないという気持ちもあり盛岡農業高校へ進学したが、卒業後は地元の会社に就職した。休みの日は出かけるなどして、農業からなるべく距離をとるような生活を送っていた。

農作業をする武志さん

しかし、子どもが生まれた31歳の時に就農を決意した。「いつかは農業を継ぐのであれば、親が元気なうちにノウハウを聞いておきたい。親も60歳を過ぎたので、就農を決意した」と話す。

就農したものの、農業から離れていた武志さんは農作業の中身も分からず、父に言われたことをこなす生活から始まった。5年目には父から経営を譲り受け、自ら計画を立てて作業するようになった。そんな武志さんの農業経営の基礎となったのが、25年以上続くみやぎ生協での「今朝採りレタス」の販売だ。朝に収穫したレタスを当日店頭に並べるという販売で、フェアでは店頭で生産者らが販促をし、店舗スタッフは圃場に来てレタスの収穫体験をするなど、今も交流が深い。週に1日は休みが取れるようにすることで生産者への気遣いがされている。「約3カ月間、毎日安定して出荷するというプレッシャーもある中、休みがあるのは助かっている。反面、良いものを届けるという産地としての責任感も強くなった」と話す。より良いレタスを食べてもらうため、化学肥料を減らした栽培にも取り組んでいる。

今朝採りレタス

消費者を思い浮かべて

相手のことを考えるということが必然と感じるようになっていた武志さんは、まわりの声や取引先からの要望もあり、GAP(農業生産工程管理)に取り組んだ。令和2年には、東部地域県版GAP園芸部会の部会長として、複数品目の野菜で岩手県版GAPの確認登録を受けた。令和6年には岩手町Ⓖ.レタス生産チームの3農場でグローバルGAPに取り組み、団体認証を取得した。「認証GAPの取得によって本当の安全・安心が消費者に届けられる」と笑顔で話す。令和4年からは、岩手県内のモスバーガーでレタスが使われるようになり、「モスの産直野菜フェスタ」では店長などスタッフが圃場に訪れレタスの収穫を体験し、各自が持ち帰り店舗で使われている。「お互いの顔が見えることで、産地としての責任の大切さを身に染みて感じる」と話す。

レタス生産チーム

一時期は農業から目をそらしていた武志さんだったが、今は相手のことを思い浮かべてレタスを生産する姿がある。また、グローバルGAPに取り組むことで作業の効率化や収益性の向上にもつなげている。そして「これからも、おいしいレタスを確実に届けていくことが大事」と話し、お客さんを意識した武志さんの経営が消費者の笑顔を生んでいくだろう。

GAPに取り組み、令和6年にはグローバルGAPの団体認証を取得しました。整理整頓がされることで何がどこにあるか把握でき、作業効率は向上しています。また、圃場ごとの記録が残るので翌年の計画が立てやすくなり、収穫量の把握や施肥量の削減にもつながっています。

グローバルGAPの団体認証を取得

プロフィール

澤瀨 武志

澤瀨 武志 さわせ たけし さん

仕事の後の1杯のビールを楽しみに農作業をしています。350mℓ缶1本が基本です。

※広報誌「夢郷」 2025年10月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。