農のかたち〜私流〜

ネギのプロ集団へ

八幡平市でネギを生産する合同会社みのり風土。代表の村上さんと6人の従業員、約30人のパートで、九条ネギ6ha、長ネギ3.5‌ha、リーキ10aを作付け。JGAPの認証を取得するなど、品質の高いネギを生産するネギのプロ集団を目指し日々奮闘している。

法人で新規就農

以前は、たい肥センターのコンサル業務をしていた代表の村上さん。たい肥作りのノウハウと、そのたい肥を使い生産される農産物の販売を手伝ってきた経験を生かし、1年間の研修を経て平成24年に会社を設立した。「当時は、企業と契約する際は法人の方が良いと言われて1年目から会社として始めた」と話す。秋冬期の長ネギをメインの品目に、夏はキュウリを作付けし法人としてスタートした。

九条ねぎの出荷をしている様子

しかし、キュウリ栽培は最盛期には朝夕の収穫と出荷調整に追われ、雇用した人の働かせ方に課題があった。「朝早くから収穫し繁忙期は夜も遅くなる。人を雇用しての農業では品目構成に無理を感じていた」と当時を話す。農業に関わる仕事で培ったノウハウや経験はあるものの、実際に農業をするのは研修期間を含めても2年目。試行錯誤の日々が続くが50aから始めた長ネギも現在では3.5‌haまで拡大してきた。

そんな中、令和元年1月に、九条ネギを専門に生産・販売する京都府の農業生産法人こと京都㈱から、契約栽培の話があった。3月には京都を訪れ、実際に九条ネギの栽培方法や味を確認した。実際に見た九条ネギはイメージと違い、作るのも難しいことが分かった。反面、他の人がまねできないものをやろうという意欲も湧いてきた。

九条ネギとの出会い

すぐに九条ネギの種を譲り受け、同年に50aから栽培を始めた。栽培する九条ネギは原種に近い「あんじょう」という品種で、九条ネギ特有の甘みと柔らかさを兼ね備えているが、栽培は難しく手間がかかる。当初は「九条ネギは青ネギで葉の部分を食べるため、長ネギとの栽培の違いに苦労した」と話す。一方で、納品先から高い評価もあり、社員のモチベーションも高まり、大手飲食チェーンでも使われており、仕事への誇りを感じ始めていた。

また、九条ネギは再生するので、一度定植した圃場から3回の収穫が可能。長ネギとは違う難しさもあるが、メリットも感じている。

九条ねぎの出荷をしている様子

プロ集団を目指す

会社設立から12年、九条ネギの作付けも6‌haまで拡大している。地元での認知度向上のため、昨年から県内販売にも力を入れている。「岩手県は長ネギ文化が根強いので、地元で生産している九条ネギを知ってほしい」と話す。

そして、会社経営として目指しているのは「ネギのプロ集団」だ。社員を募集しても農業経験がない人しか来ない時代。だからこそネギに特化した品目構成で、データを蓄積し観察力を高めるようにしている。今年はJGAPの認証を取得し、作業の効率化と平準化に取り組んでいる。「ネギのプロ集団」になることが、会社の成長につながると感じられる。

九条ねぎの出荷をしている様子

プロフィール

村上 博信

村上 博信 むらかみ ひろのぶ さん

「今は仕事一筋の日々ですね」と苦笑いする代表の村上さん。日々、ネギと向き合っています。

※広報誌「夢郷」 2023年9月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。