がんばれ、担い手!

酪農を次の世代へ

親の背中を見て育つ

岩手県沿岸北部に位置する久慈市で、両親と経産牛約60頭と育成牛50頭を飼養する和生さん。幼い頃から牛と触れ合うなかで興味を持ち、実家の酪農を継ぐことを目標に育ってきた。

子どもの頃から牛の世話をしたり、餌となる牧草やデントコーンの刈り取りの時は、父が運転するトラクターの横にも乗っていた。牛に興味をもっていたが、より興味が深まったのが地元の共進会での牛の引きつけだった。「兄も牛に興味があり、一緒に共進会に行っていました。自分も牛の引きつけをするようになり、ジュニアとしてベストショウマン賞に選ばれた時に共進会のおもしろさを知り、のめり込んでいきました」と話す。その頃には兄よりも興味を持ち、将来は自分の家の牛で賞を取りたいと思うようになっていた。

牛の世話をする和生さんの様子写真

そんな和生さんは、中学卒業を前に将来について決意を固め盛岡農業高校へ進学した。「将来はサラリーマンではなく、自分の力量で結果がでる経営者を目指そうと思いました」と当時を話す。それは、小さい頃から親の背中を見て育った和生さんが、実家の酪農を継ぐという意志を固めたタイミングだった。しかし、もともと両親と祖父母で経営していた牧場だったが、数年前に祖母が亡くなり忙しくしていた家族を見ていた和生さん。自分が早く一人前になり家族を楽にしてあげたいという気持ちが感じられた。

将来を見据えて

盛岡農業高校に進学した和生さん。同級生には農家の後継者や非農家であっても牛に興味を持つ人など、今までにない刺激を受けながら生活していた。時間を見ては農場の先生を訪れ、授業では教わらないことを聞くなど牛に関する知識を深めていった。

牛の世話をする和生さんの様子写真

卒業後は実習に行きたい気持ちもあったが、家の労力不足の状況を踏まえて同校の特別専攻科に進んだ。「将来のことも考え、家の仕事を手伝いながら家畜人工授精師と受精卵移植師の資格を取りました」と笑顔を見せる。将来の自分の姿を想像しながら進む姿勢がうかがわれる。

特別専攻科を終了した令和2年の春からは、家の仕事に専念するようになった。

牛の世話をする和生さんの様子写真

地元の仲間と次の世代へ

父の指示のもと、日々の仕事をこなす和生さん。意識しているのは規模に見合った効率的な経営だ。乳牛の頭数が増えれば乳量は増えるが、餌の量や人の手間も増える。効率の良い経営を目指し、牛を見る目を養っている。「将来的には、誰がやっても同じくできて人が楽できる経営を目指したい」と話す。父が作った基盤をもとに次の世代に繋げていこうという意志が伝わってくる。

酪農の将来について話す和生さんの写真

まだまだ分からないこともある和生さんだが、支えになっているのは身近にいる同年代の酪農家の仲間たちの存在だ。「困ったことを相談できる人が身近にいるので心強い。近いので実際に見てもらいアドバイスをもらえると納得できる。この仲間と一緒に酪農で地域を盛り上げていければと思っています」と話す。

中学生時代に決意した酪農家として確実に歩みを進めながらも「自分の牧場で生まれた牛で、共進会で一番になりたい」と、幼い頃から思い描いた夢も忘れていない。

プロフィール

大芦 和生

大芦 和生 おおあし かずき さん

共進会にのめり込む和生さんは、時間をみつけては毛刈りなど牛の管理を欠かさず、上位入賞を目指しています。

※広報誌「夢郷」 2022年11月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。