がんばれ、担い手!

人との繋がりを大切に

酪農家の長男として

岩手県の北部に位置する九戸村で、両親と酪農を営む太朋さん。搾乳牛30頭と育成牛17頭を飼養し、就農して6年目になる。3人兄妹の長男として生まれ育った太朋さんは、高校進学の時、農業高校へ進む道も考えた事もあったが、普通高校へ進学した。

両親からは「やりたい事をやればいい」と言われ、家を継ぐ話しはされてこなかった。家の牛の世話は、忙しい時に手伝ったり、共進会で牛を引く程度で、将来は普通に就職するのだろうと当時は考えていた。

しかし、機械などに興味があった太朋さんは、高校卒業後の進路を考える時期に岩手県立農業大学校の存在を知った。家を継いで酪農をするのも一つの仕事と考え、農業大学校への進学を決意した。

田澤太朋さん

基礎を作り上げた学生時代

農業大学校へ進学した太朋さんは「進学して酪農を学び始めたが、実家で手伝う事も少なかったので知らないことばかりでした」と当時を話す。それから、学校が休みの日は実家に戻り作業を手伝い、酪農の仕事を自ら学ぶようになった。

そして、心に大きな変化をもたらしたのは、農業に関わる人たちとの出会いだった。「大学校では、農業に関わる仲間と出会い友達も増えました。その頃から酪農だけではなく、農業への興味が深まりました」と当時を振り返る。

現在、4Hクラブなどに所属し、酪農関係にとらわれず、人との繋がりを大事にする今の太朋さんの基礎を作り上げた時間でもあった。

牛を大切そうに撫でる田澤さん

学びと仕事の違い

農業大学校卒業後は、実家に戻り就農した太朋さん。2年間は父のもと、全体の仕事の流れを探っていたが、3年目からは自らの意見を主体に作業をするようになった。実際に酪農を仕事として始めた太朋さんは「学校で習った事だけでは対応できない事が多かった」と話す。

分娩の失敗や牛が倒れたり、機械が壊れたりと、学校では学べないことがたくさんあった。「父に頼り過ぎていたと反省しました。なんとなくやっている様に見えて、臨機応変に対応していた父の偉大さを感じました」と苦笑いする。

現在は、関係機関などとも相談しながら新しい取り組みにも挑戦しながら、年間の作業スケジュールをしっかり把握するために台帳を付けるなど、先の作業を意識している。また、経営内容をより理解するため、申告についての勉強もしている。少しずつ経営者としての意識が高まってきている。

重機に乗る田澤さん

先を見据えた経営

現在の牛舎は老朽化と手狭な土地のため、「今後は広い土地を見つけて、搾乳牛舎の建設を検討している」と話す太朋さん。「今は両親と一緒に働いているが、将来的には人の雇用も考えている。また、人手をかけず効率の良い作業をするために、機械化についても勉強していきたい」と話す。

より効率的作業で安定した乳量を出荷することでの安定経営を目指している。

また、「今の自分は農業関係者の仲間に支えられている。今後も人との繋がりを大切にしていきたい」と話す。そして、「すぐには無理だけど、両親の力を借りず自分の力で酪農経営ができる様になりたい」と、真剣な眼差しで話す太朋さん。将来が期待される担い手だ。

子牛の面倒を見る田澤さん

プロフィール

田澤 太朋

田澤 太朋 たざわ たいほう さん

ゲームやマンガも好きだけど、スノーボードや釣りなどもする趣味が多彩な太朋さん。

※広報誌「夢郷」 2020年12月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。