がんばれ、担い手!

時間を大切にした農業経営を!

シンプルに1つのことをやる

岩手県中央部に位置し、滝沢すいかやチャグチャグ馬コなどが有名な滝沢市で、ネギを中心にミニトマトとレタスを栽培する和俊さんは、就農から4年目を迎える。両親は、稲作を営む兼業農家で、3人姉弟の長男として生まれ育った。

物づくりが好きだった和俊さんは、工業高校に進学し、金属加工会社へ進んだ。「将来は家の農業を継がなければとは思っていたが、稲作だけでは食べていけないと感じていた」と当時を振り返る。

その後、5年早く農業を始めた同級生と、よく農業の話をしていた。農業をするなら2つの仕事をする兼業農家ではなく、シンプルに1つのこと「専業農家」と考えていたので、参考になる話は多かった。そして、親から「農業はやるな」と言われていたが、景観を荒らしたくない思いが強かった和俊さんは、農業を始める決意をした。

田沼和俊さん
農機の手入れをする様子

多くの品目からネギを選択

和俊さんは勤めていた会社を退職し、盛岡市の野菜農家で1年間研修をした。「稲作だけでは食べていけないと感じていたので、野菜の栽培を学ぼうと思っていた」と話す。研修先では、水稲と野菜の複合経営で、トマトやネギ、ブロッコリー、レタスなどを栽培していた。

就農後に導入する品目は決まっていなかった和俊さんだが、研修先でのネギの栽培に興味を持った。「収益性の面もあるが、機械での作業が多い点が自分に合っていると感じた」と、物づくりや機械が好きな和俊さんならではの着眼点だった。

平成29年に就農した和俊さんは、ネギを中心にレタス、ミニトマト、スイカを作付けした。

「育てることはなんとかできたが、難しいと感じた。商品として出荷できるネギを作る技術や経験が、まだまだ足りないと感じた」と苦笑いする。和俊さんは、若手農業者の仲間や以前の研修先、知り合った先輩農家など、多くの人に話を聞き、本を読んで学び知識を身につけてきた。

「2年目と3年目は、新しいことを試し、試行錯誤してきた」と、栽培技術にも磨きをかけている。

今年は、ネギ1.7ha、ミニトマト4a、レタス25aを作付けし、良いものを予定数量出荷するため、植えたものを取りきるのではなく、良いものだけを取るため、多めに作付けしている。チャンスロスをなくすことで経営面でのメリットを意識している。

ネギを収穫する田沼さん
取材中の田沼さん

地域の農業と働き方

自分が立てた計画をクリアしてきている和俊さんは、5年目となる来年のネギの作付けは2haとしている。また、昨年からは、働く時間は夕方5時まで、忙しくない時期は週2日休むことを目標とし、家族との時間を大切にしている。「パートも短時間や週1回などの働き方を進めている。農業ではあるが、一般企業と同じような環境を目指している」と話す。

就農4年目を迎えるが「農業を始めて感じるのは単純に楽しい。物を作るところ、経営というところ、自分のもった目標に実行できるチャンスがあり、すべて自分に返ってくる」と目を輝かせる和俊さん。

将来の地域農業を守っていくため、水稲も拡大し地域に合ったうまくいくための仕組み作りも模索している。

ネギを収穫する様子

プロフィール

田沼 和俊

田沼 和俊 たぬま かずとし さん

冬は子どもたちにスキーを教えながら、趣味のスノーボードを楽しむ和俊さん。

※広報誌「夢郷」 2020年8月号掲載時の情報です。掲載情報が変更となっている場合がございます。