未来農業創造人

仲間と一緒に楽しい農業を目指す

サラリーマンから転身

多雪に悩まされた冬もようやく去り、新しい土が見え出した3月、田沼和俊さんのハウスの中は柔らかな春の日差しに包まれていた。 ネギとレタスの育苗箱に優しい目を注ぐ田沼さんは脱サラして就農し、野菜作りを始めてまだ2年目だが、「農業は楽しいよ」と笑顔で話す。

田沼和俊さん
田沼和俊さん

田沼さんは兼業農家に育ったものの、農業には関心がなかったので工業高校に進み、卒業後は会社員になった。 精密機械の会社から運送会社に転職し、「人に使われるのも人を使うのも大変。どうせなら自分で何かをやりたい」という気持ちが湧き上がってきたのは、30代半ばになった頃だった。 「父親からは農業を継がなくてもいいと言われていましたが、自分は農家の長男だという思いがどこかにあった。 農業なら自分でやれる。フワッとした気持ちではなく、確証が持てるまで18年かかったけれど、やるなら兼業ではなく専業でやろうと。 一足先に脱サラして農業を始めた友人がいいモデルにもなった」と、田沼さんはその頃の心境を振り返る。

いざ、決心を打ち明けると親からは反対されたが、田沼さんは揺るがず、まずは準備期間として1年間、盛岡市内の農家で研修を積んだ。 田沼さんが「師匠」と呼ぶ研修先は、父親が水稲、息子が野菜と分業している大規模農家で、「仕事のスピード感が何より勉強になった。 種蒔きから収穫、出荷まですべてが無駄なく効率のよいスピード感を持って作業が行われている。 それは自分も真似したい方法だし、パートさんを含めた人の使い方もこれから大いに参考にしていきたいと思います」と話す。

10年先も地域の農村景観を守りたい

独り立ちしてからは師匠の農業形態を参考に、お父さんは水稲、田沼さんは野菜と分業にしている。 現在の経営規模はネギ70a、レタス20a、スイカ15a、ミニトマト2a。1年目ながら平均単収をクリアし、ネギとレタスは2年目から増やしたが、 「農業も野菜作りも2年でわかるものではない。去年も今年も自分にとっては勉強の時間」と気を引き締める。

温度管理も慎重なレタスの苗
青々と育つネギの苗

実際に野菜作りを経験してみて、将来に向けての課題も少しずつ見えてきた。 その1つは出荷先で、現在は師匠のルートでスーパーへの直接販売が中心だが、今後はJAの流通も含めてバランス良く販路を広げていきたいという。 もう1つは規模拡大で、「自分だけではなく、地域の農業を守るためにも適正な規模は必要だと思う。 でも、現状は使っていない農地でも貸す人がいなくて、特に畑は少ないのが悩みです。例えば、ネギの皮を剥く部門や選別する部門が地域内にあれば生産者は作ることに専念できるし、雇用も生み出せる。 施設や機械の共同化も進め、個人経営だけでなく地域を巻き込んだ農業を展開していけば、高齢者も若い人もみんなが幸せになれると思います」と、田沼さんは前を見る。

青々と育つネギの苗
温度管理も慎重なレタスの苗

そんな夢を持った若い農業者が集まって結成したのが「グリーンワークス」だ。 農業に関する情報交換や交流を行っている仲間たちで、昨年は岩手朝日テレビのふるさとCM大賞に滝沢市を代表して応募。 「農業は、ゼロからでもスタートできる。みんなで一緒に農業をしよう!」と、農業の楽しさをポップに伝えた作品は、見事大賞に輝いた。 「10年先もこの農村景観を変えたくないというのは就農時からの想い。今はまだ勉強中の身だけど、来年、再来年からはグイグイ行けるといいですね」と田沼さん。 春の始動とともにさらなるステップアップが期待される。

プロフィール

田沼 和俊さん

1980年滝沢市生まれ。盛岡工業高校機械科を卒業後、シチズンに入社。 その後、ヤマト運輸に14年間勤め、2016年に退社。 盛岡市内の農家で1年間研修を積んだ後、2017年に就農。 農園を「和苑」と名付け、野菜農家となる。 現在、滝沢市内の若手農業者で結成する「グリーンワークス」(会員28名)の事務局長を務める。

JAへの要望

野菜でも米でも、自分たちは思いっきり作るのでJAさんには組織力を活かして販売を伸ばして欲しい。 販路の拡大をお願いしたいし、融資についても相談したい。 みんなで一体になって取り組んでいけば何とかなると思っていて、我々も頑張るから、藤原さんにもぜひ頑張っていただきたいですね。

JA新いわて 滝沢支所

住所
〒020-0667
滝沢市鵜飼向新田7‐76
電話番号
019-684-2211