未来農業創造人

豊かな自然の中で食と人を育む

たくさんの人の笑顔のために

写真:田村恵さん
田村 恵さん

「学生の頃は英語教師になりたかったんです」

そう語る田村さんは、農業生産法人株式会社サラダファームに入社して今年で11年目を迎えた。彼女が高校生の時に父・昌則さんが、味付けゆでたまごや温泉たまごの製造・販売を行う岩手エッグデリカを設立。その後、サラダファーム事業部が岩手エッグデリカから分社し、法人として新たなスタートを切った。田村さんも学生の頃からアルバイトなどで携わっており、楽しそうに働く父や従業員の姿が印象的だったという。

やがて大学へ進学した彼女は、英語教師になる夢を抱きカナダへ留学。そこで世界的に有名なブッチャート・ガーデンに出会い、大きな衝撃を受けた。およそ22万㎡もの広大な敷地に咲き誇る美しい花々。全部で5つ作られたエリアには、ローズガーデンやイタリアンガーデンのほか日本庭園まであり、その全てが丁寧に管理されている。あまりの素晴らしさに感動した田村さんは「八幡平市の玄関口にもこんな風景を作りたい。そしてたくさんの人たちを笑顔にしたい」と強く思い、その夢を実現するために父が営むサラダファームへと入社した。

現在サラダファームでは、ブッチャート・ガーデンからヒントを得て構成したガーデンパークを始め、地場産品を使ったレストランや動物との触れ合いなど、さまざまな事業を展開している。そして、それら全ての基盤となっているのが農業部門だ。田村さんは入社するまで本格的に農業をしたことがなく、野菜が育つ過程は驚きの連続だったという。吹けば飛ぶほど小さなトマトの種が芽を出し、地に根を張って葉を広げ、実が赤く熟すと茎は役目を終えたように枯れていく。その生命のサイクルを目の当たりにし、命の重みとそれをつないでいくことの大切さを実感した。

経営塾を経て組織全体に大きな変化

田村さんは現在、サラダファームの取締役部長としてマーケティングやサラダファーム全体の管理・運営などを担当している。田村さんにとってチームマネジメントは大きな課題であり、自社に適した方法を模索している時にJAバンク岩手農業法人経営塾(以下「経営塾」)への参加を勧められた。

経営塾では異業種の人たちとの交流もあり、社会に出てからサラダファーム一筋でやってきた田村さんにとっては大きな刺激になった。また企業の経営理念やミッションが従業員に浸透することの重要性や、事業を行った後の振り返りの必要性などを知ることで、仕事に対するアプローチも変わったという。

「当社の従業員は農業を専門にしてきた人はもちろん、デザイン業や旅館業を経験した人など、さまざまなスキルを持っているのが特徴です。そのため、それぞれが自分の個性や経験を生かして柔軟に働ける環境を整えることが、自分の役目ではないかと思うようになりました」

この他にもマーケティングに関する勉強会など、積極的に参加してきたという田村さん。経営塾を受講したことでそれらの知識が統合され、経営に対する理解をより深めることができたという。それらの学びで得た知識を現場で実践することによって、組織全体としても大きな変化が見られるようになった。

「これまでは何かで失敗すると『駄目だった』という結果の確認までで終わっていました。でも今は『駄目だった。じゃあ次はどうすればいい?』と、その先のアクションを従業員全員で起こせるようになってきました。もともと風通しの良い会社でしたが、さらに部門間の壁が取り払われて誰もが自由にアイディアを出せる環境になってきたと感じています」

また日々の記録をしっかり取ることによって、蓄積されたデータをもとに対策を立てることも可能になった。田村さんは組織としての豊かな土壌を作り、自社に関わる人と人とを上手くつないでいくことが大切だと語る。

写真:いちごは土を使わず衛生的な水耕栽培
いちごは土を使わず衛生的な水耕栽培

大切な仲間に囲まれて描く夢

そんな田村さんは日頃から3つの「きく」を大切にしている。自分の周りのさまざまな音を「聞き」、相手の話を「聴き」、相手の思いを引き出すために一歩踏み込んで「訊く」。農業のことや他の企業について知らない自分を、周囲の人たちは愛情をこめてここまで育ててくれた。だからこそ人とのつながりを大切にしていきたい。その思いが、田村さんの仕事や会社に対する姿勢を形作っているのだろう。

サラダファームでは人材育成にも力を入れており、「ずっとここで働くも良し、いろんな可能性を求めて他の企業に行くも良し。どんな場所で働くにしてもその環境に適応し、より良いパフォーマンスができることを意識した人材育成に取組んでいます」と話す彼女からは、人に対する真摯な気持ちが伝わってきた。

休日には家族連れなどで賑わうサラダファーム。田村さんは農業を通じて美味しい食や豊かな自然を提供しながら、美しい心を育てられる環境を整えていきたいと語ってくれた。

写真:冬期はいちごの摘み取りや食べ放題が人気
冬期はいちごの摘み取りや食べ放題が人気

プロフィール

田村 恵さん

1986年八幡平市生まれ。岩手県立盛岡第二高等学校を卒業し、盛岡大学へ進学。大学在学中にカナダへの留学などで視野を広げ、卒業後に父が代表取締役を務める株式会社サラダファームに就職。現在はマーケティングやサラダファーム全体の運営・管理などを中心に担当している。